ブックタイトル牛堀の文化 第4号 特集「私の昭和史」

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概要

牛堀の文化 第4号 特集「私の昭和史」

潮来町浜町に何軒かのカフェがあった。店先からポータブル蓄音機の音が流れていた。家にラジオ、レコードの無い時代、もの心付いた頃先輩に連れられて夕方に行き、女給さんに教えてもらった。彼女達も昭和の不況で県北や東北出身者が多かった。悲しき子守歌歌ミスコロンビア可愛いおまえがあればこそなんのそのつらい浮世も世間の口も母は楽しくなんのその生きるのよ昭和一三年大ヒットの映画「愛染かつら」の主題歌。芝宿の東栄倶楽部で上映されたが、入場出来ない人が出るほどの大人気で、私も軍隊入隊前、最後の映画であった。出征兵士を送る歌生どわ命Zがは大え君あにる讃えて送る歌永田弦次郎・長門美保百されたる朝ぼらけ歓呼は高く天を衝く一億のいざ征けつわもの日本男児昭和一五年三月一日、広島県宇品港で輸送船に乗り込み出港する時、婦人会の方達が日の丸の小旗を力一杯振りながら歌つてくれた。あの時の感激は終生忘れない。玄界灘の荒波を越えて上陸したのは大連港であった。行く先は知らされず、三月八日満州国浜江省阿城県阿城重砲聯隊に入隊した。関東軍重砲の基幹部隊であった。第一中隊長は東久遁宮盛厚王殿下が勤めて居られた。私の五年有余の軍隊生活はここから始まったのである。A斗a勺J海行かば海行かば水漬くかばね山行かば草むすかばね大君の辺にこそ死なめかへりみはせじ昭和一一年近衛内閣は国民精神を高揚させるために大伴家持