ブックタイトルふるさと潮来 第五輯

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概要

ふるさと潮来 第五輯

つしか深い谷底に引きづられる様な睡りに落ちていった。芭蕉一行三名を本堂に休ませたものh仏頂和尚の心底には向か割り切れぬものがあった。折角はるばる江戸より水郷の月を見るために訪れた一行の胸中を思うとき、仏頂和尚とて、乙の大雨は如何ともする事の出来ない憶燥があった。しかし外は大雨の音と、竹林のざわめきのみが聞えてくる。和尚は竹林の騒がしさに居間の障子を開けて庭を見た、雨は依然として降り続いている。しかるに竹林に当る風は厳しく太い孟そう竹が大きく揺れているのが見える。「はて/風が変ったわい、ひょっとすると止むかも知れん「はて、風が出たようだわい。」ぞ・:;::。」和尚は独り言を言いながら障子を閉めたもの〉伺んとしても今夜の十五夜の月を見せてやりたい一念の和尚であった。半刻、一刻、和尚は座禅を組んで無の境地となった。しかし禅師も人の子である、いつしかうつらうつらとなった。「ハッ」として眼を開けたとき外の雨音の静かさに気付いたのである。思わず障子を開いたその瞬間、十五夜の月光が仏頂和尚の眼を射った。その驚き、その嬉しさ、青の銅門を堀り続けて最後の完成の光明を見た時の老僧の心境に似たものを感じる仏頂和尚の心中であったろう。和尚はそのま〉本堂の廊下を走った。「雨が上りましたぞ刀」「月が出ましたぞH」和尚の声が本堂に流れた。芭蕉も曽良も宗波も元は武士である、武士は轡の音にも眼を覚ますと言う自然の身乙なしが備わっていた和尚の廊下の足音で熟睡していた三人は既に眼を開けていたのだ。和尚の乙の二た声で飛ぴ起きた三名は和尚の居間へと急いだ。開け放たれた和尚の居間の間々まで十五夜の月光がくまなく冴え渡っている。-13ーそして十五夜の月光にさらされた四名の顔が何か魔物めいた三人の眼光が逆に月光をにらまへているのである。雲足は早く十五夜月に去来する。雲足は綿の如くに飛ぴ去ってはまた新しい雲が纏いついては離れてゆく雲の早さ、さながら月が飛ぶ様に見えた。丑三ツ刻の月光は冴えぎえとして樹木を照らしていた。四年前に仏頂和尚がζの大儀庵に入院記念として植えられた菩提樹の枝から雫がぽたり、そして聞を置いてまたぽたりと月光を添えて落ちるさまが見える。芭蕉は矢立の筆を抜いて一気に短冊にしたためた。月早し梢は雨を持ちながら桃青