ブックタイトル潮来の昔話と伝説

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概要

潮来の昔話と伝説

利根の竜神今から千年余りも昔のこと。とうごくひでひとつぶふ日本の東国では日照りの毎日が続き、数カ月の問、一粒の雨も降らなかった。すいごういどみずとねかすみがうら豊かな水郷地方でも井戸水はもちろん、利根川や霞ヶ浦までかれはててしまった。いね稲は実らず、作物はできず、人々が生きてゆくことができない。りょうしゅみやこいしおかめいそう常陸国では、領主が都(石岡市)に名僧を数百人も集めて雨ごいの祈りをしたのだが、このため、水の水がなければ雨はいつこうに降らなかった。そのころ、利根川のほとりの板来の里(潮来町) に、ト竜という一人のみすぼらしい坊さんが一住んでいた。ト竜は毎日空腹をかかえ、食べ物を求めて村の家々を歩くのだが、「こじきすb」、「くそ坊主」おとと、ののしられて、相手にされない。いつも最後は甚兵衛の家を訪れ、親切で正直者の甚兵衛から、わずかの食べ物をもらって帰るのだった。今日もやって来たト竜に、わしの家でも今日かぎりで米も水もなくなりゃす。今、最後の飯をあげますベい」ひとわんと、甚兵衛は一椀の飯をたいてさし出した。だまって食べ終わったト竜は、甚兵衛にこういった。せわ「甚兵衛さん、長々お世話になりました白わたしはいよいよ天に帰ります。だが、親切な甚兵衛「ト竜さん、さんや村人達を、このままうえ死にさせるわけにはいきません口せめてものお礼にわたしが雨ご