ブックタイトル潮来町史

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概要

潮来町史

原始・古代会雑誌』二四l二七一)。また千葉県市原市の山倉一号墳出土の人物埴輪、埼玉県行田市の酒巻一四号墳出土の人物埴輪、那岡郡東海村の舟塚一号墳出土の人物埴輪も頭部に三角形の被物をつけている(辰巳和弘『埴輪とE絵画の古代学』)。紙冠は『枕草子』に見苦しきもの「法師陰陽師の紙冠して放したる」とあり、『紫式部集』にも「法師の紙を冠にして」とみえる。葬式に際し死者の頭部に三角形の白布をつけるのは、死者を邪霊から守る意味があり、近親者や葬式の参列者がつけるのは、忌み、すなわち魔除けのためである。古墳の石室や埴輪に描かれた鱗文にも同じ考えがあったのである。死者の霊魂は蛇と結びつき、三角形の鱗文で象徴されることが明らかそれを象徴する鱗文がどうして邪霊らいきを鎮めたり、魔除けの呪力を発揮するのであろうか。『礼記』の祭義にえ忽んじこれを鬼というとある。『准南子』のになった。しかし、死者の霊魂ゃ、よれば、人が死ぬと土にかえり墜形訓にも、「人死して鬼と為る」とみえる。古代の中国では死者の霊魂や祖先の霊魂を鬼とか、鬼神と称していたのである。さしでんと結びついていた。『捜神記』巻一六や『左氏伝』の昭公七年条、二十}の鬼神が疫病年条、『史記』の趨世家、恵文王十六年条には、鬼神が疫病をもたらし、}の鬼神を杷れば疫病が治まると記されている。ほおそうすると、死者の近親者とみられる人物埴輪の目の下や頬に三角形ほおべに状に頬紅を塗るのは、死霊のもたらす疫病から身を守る意味があったのである。また、死者の霊の鎮魂や魔除けのために古墳の石室や横穴に鱗文が描かれたのである。虎塚古墳の石室に連続鱗文や蛇目文が描かれていたことは、被葬者や古墳の築造者が死者の霊魂や土地の神霊でもある蛇を杷っていたことを示している。だから箭括氏麻多智はもとより、茨域国造壬生連麿が死者の霊魂や土地の神霊でもある夜万の神を打ち殺し170たり、追い払うはずがないのである。だいいち、夜万の神を打ち殺してしまったら、古代社会でもっとも重視されていた祖霊信仰が崩れてしまぃ、農耕儀礼ができなくなってしまうのである。『陪書』倭国伝には、ぽ〈ぜいふげき七世紀の日本の社会を「ト箆(うらない)を知り、尤も亙親(みこ)を信ず」とあるので、祖霊信仰が盛んであったことが知られる。