ブックタイトル潮来町史
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潮来町史
短期間のうちに馬耕法の伝授はむずかしかったらしく、翌年五月に県は泰西馬耕法の熟練者を雇用したいと農務局に要請している。管下行方郡弘農社ノ義ハ客年十一月旧勧農局-一一於テ農具貸与等特別ノ保護ヲ受ケ芳漸ク開墾事業相運ヒ居候得共固ヨリ創業ノ義一一付農事熟練ノ社員ニ乏シク農夫使役方等事業上差問候趣依テ今般月給金拾五円以上ノ見込ヲ以泰西馬耕熟練者壱名雇入度旨出願有之就テハ貴局ニ於テ御用掛等ノ内壱名御回シ相成間敷哉給料等ハ海テ該社ヨリ給与ノ筈ニ有之尤モ目下貴局ニ於テ若シ御都合相成兼候へハ強チ在任者ヲ望ム訳ニハ無之候間他一一至当ノ人物御見込ハ有之間敷哉乍御手数何分ノ御報答一一預リ度此段及御依頼候也(同前)弘農社は、勧農局から農具を貸与されるなど、特別の保護を受け、ようやく開墾事業にとりかかることになったが、農具の運転に長けた社員がいないため、事業が停滞しているという。弘農社では月給一五円を支払うはずなので、農務局御用掛のうち一名を回しては貰えまいか、もし在任者の都合がつかなければ、適当な人物はいないであろうか、と切迫した要請をしている。馬耕熟練者に社長並の給与を用意するほど困っていたのである。この結果は、丁度一年後に「即今下総種畜場ニ於テ該業熟練ノ者有新しい時代の幕開け之」ということで片がついたようである。馬耕具の操縦法の心得ある者を欠いたことが、『勧業年報』のいう「社員中紛議」の一っかどうかは定かでない。弘農社の耕地のうち「半分は本社みずから耕夫を雇って、農業技術者の指導により耕作し、他の半分は小作地として貸付け、小作料を徴収し第I章た」(『茨城県史近現代編』)といわれる。)の事情について、「弘農社規則」の「第六章耕転法及耕地貸与規則」によって詳細にみておこう。第四十六条のとす第四十七条可し耕地五町歩以下を以て一区と定め順次番号を付するも耕地拾区を以て一舎と定め農業技術者及耕夫を配置すJ、し但一舎に全備する処の農舎牛馬農具其他一切の需要物件を付す第四十八条前一舎毎に付与す可き処の物件ハ社長の見込を按し会議に於て決定す可し耕夫中へ伍長を置き農業技術者の補手となり現行に便第四十九条ならしむ但其働方の規則等ハ社長の専制に係るものとす毎舎耕夫ハ一二ヶ月毎に交代せしめ半数を他舎へ移し半第五十条数据置き順次交代せしむ伍長ハ書記及技術者の指俸を受け其組の指揮を為し文第五十一条其補手となり現業を行はしむ就業時間二十分前の鳴鐘を聞き支度を整へ置き次の鳴第五十二条のとす鐘則定刻に各器械場に集り其組の伍長より器械を受取耕転するも但右時間に遅延する者ハ伍長に於て理由を札し事柄に寄り至当第五十三条の過代を命するものとする器械ハ必す伍長より受取り伍長に納むへし若し之を犯し伍長の手を経す或は終業時間前に器械を捨て業を終る等の如き処業あるときは伍長ハ之を認め置き過怠として日数を定め其組の第五十四条器械を掃除せしむるものとす器械は之を大切に取扱ふへし若し粗暴の取扱よりして57