ブックタイトル潮来の昔話と伝説
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潮来の昔話と伝説
おうせ行って逢瀬をたのしむ。その道順はこうだ、ああだのって、まちまち、大蛇は火を嫌うから出逢つたらマッチを三本すって投げつけて逃亡するのがいいなんてl。東西三町十問、南北三町二十問、周囲十四町五十問、面積六町三反一畝十歩、水田五十町歩の濯瓶に供するどくきこんとう片岡池は神秘な池である。大蛇の毒気にふれて昏倒した乙女があったのを幸い通りかかりの人がたすけたとか。大蛇も本居の池にあきあきしたものか。遠く浪逆浦へ出現したというニュースが入ったのも乙女の中堤昏倒事件と前後している。てんきょうにちりんそのころ片岡池にも松が地面に這うたのがあって大蛇の月の天橋口東の空から出る日輪には変おろちわりはないが大蛇伝説は大山が水源地でなくなると、文明開化の明治時代が来て迷信だ、あり得さんもんべから、さることだと三文の値うちもなく棄て去られてしまったが、人間の一生涯に、少年期であるが、伝説をよろこぶ期間があるものであるD伝説が人間の魂をそだててくれることと思う。少年期に多い夢を能うかぎり与えることである。夢より夢を逐うてその日その日を愉快にさせることが他日真人間となるビタミンであるのである。弘済先生の出現も古高山中なればこそで少年の魂を蝕むものが山中にはない。だから大蛇を生ずで大人物が出るのである。(延方)-13-