ブックタイトル潮来の昔話と伝説

ページ
26/118

このページは 潮来の昔話と伝説 の電子ブックに掲載されている26ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

潮来の昔話と伝説

蛇の思返し夏の暑い日のこと。作三さんが田の寄せ刈り中、手拭いが田の中に落ちていたのを見つけた。鎌の柄で引っかけようとすると、それは大きな蛇だった口その蛇は、するりと逃げ出すとすぐ脇の川に入り、泳ぎわたって弁天様の綱に入った。すぐ隣の田で仕事をしていた小田倉のじいさんがあとで、「背中に鱗がある蛇だった。弁天様の使い姫だったのではないか」といっていた。そのあと作三さんは、田の畦道を通っていると猫が蛇を狙っているのに出会った。前の件もあるので、猫を追い払って蛇を助けてやった。今日は良いことをしたと自問自答しながら田んぼの仕事をして帰宅した。何事もなく朝を迎え、朝食をそそくさと食べ向こう野といわれる島の田んぽへ向かった。ふと気がつくと船の前になり後ろになり蛇が泳いで来るではないか。しかしそのまま気にも掛けず島の田んぼで一日作業をし帰路についた。船っき場に船をつけると、蛇はどことなく姿を消す。そういう日が続いた何日かがすぎ、ある日のこと稲刈りが終わり、稲束を船に積み帰ろうとすると、一天にわかにかき曇り大粒の雨が降ってきたD 雷めいもとどろき、急ごうとすると船のともに、蛇が入り船を出すなという動作をする。作三さんは、半信半疑ながら船をそのまま置き陸路を遠回りして帰った。その時船を出した人達は、船が突風にあおられ沈没したり、流されたりで命からがら家に着いたということであった口作三さんは、これは蛇が命を助けられた思返しをしたのではないかと考え、弁天様に感謝をすると共に益々尊敬するようになったということであるD (延方)-18 -