ブックタイトル潮来の昔話と伝説

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概要

潮来の昔話と伝説

病をしていたが、二年程の永患いで母親は亡くなってしまった。二親を亡くした兄妹はくらしにもこまり借金取りに返済をせまられ、世をはかなみ死のうと善光寺の境内の裏山まで来て妹をさとし、殺して自分も首を吊ろうと枝ぶりの良い木を探していた。その時寺では住職さんが何か裏山で人の気配がすると不審に思い出て見ると、奥一さんが妹の首に手をかけんとする所に出会つた。びっくりした和尚は大声で、「コラッl」と、怒鳴るとその間へ割って入り奥一さんに向かわ昌阜、V』い「お前の気持ちは良くわかるが、それでは亡くなった親御さんも喜ぶまい、死んだ心算で働けば何でもできるではないか」とこんこんと諭し、納得した興一さんを連れ、借金をしている家を廻り支払いを待ってもらうよう話をつけた口それからの奥一さんは、和尚さんの教えを忘れず一心不乱に働き、人の嫌がる仕事でも何でもゃーり、兄妹助け合い精を出して働いた。その甲斐あって少しずつ借金を返していった。やがて、借金を払い終わったころ、進める人があり江戸へ出て努力の末、大分限者になった。後年善光寺を訪れ年老いた住職と再会、往年の助けられた礼をいい手を取り合って喜びあった。そして父母の回向と一体の地蔵を建立し寄進したという。これが縄かけ地蔵の由来だが耕地整理、都市計画等により今は昔の姿を忍ぶ由もなく、ただ寺の地名のみが残り古老の昔話に出て来るだけとなってしまった。(延方)-31-