ブックタイトル潮来の昔話と伝説

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概要

潮来の昔話と伝説

とじゃった口入口の雨戸の辺りから、雨戸にサラサラと何一一一一一-48-「シュウニュウシャ一ン」、「シュウニユウシャン」、と我のことを呼ぶ、一声ともつかぬ低く暖れたような、風音のような一かが触れる音。そして次は、人間の声とは思えんような、不気味な感じの声?一一と、時には板戸を叩くようなトントンという音一も交え、「サラサラサラ、トントン、シュウニュ一ウンヤン、ンュウニユウンヤン」としつつこく一何回も繰り返すんじゃ。しまいに我もたまりか一一ねて、「どなたじゃな」といいながらそうっと戸-一を明けて、外を見ると誰もおらん、囲炉裏の傍へ戻ってくる、とまたさっきの繰り返しなんじゃ。そのようなことを何遍かしているうちに、やがて柱時計がボlンボlンと十一時を打つ。とうとう我も根負けしての、戸棚から干物や煮物や煎餅などを戸の外へ置いて寝てしもうたんじゃよ。翌る朝眼を覚ますとすぐ入口の戸を明けて見た。と、思った通り入れ物だけ残して食べものはすっかり無いんじゃ、もちろん足跡も降り積もった雪が隠してしもうてひとつもありません。それにしでもあの雪の夜道をどこからやって来たんじやろう。狐か狸の仕業に違いなかろうが、とにかく我の所へしかも我と知って、「シユウニユウシャン」とは賢いもんじゃなと感心したり、