ブックタイトル潮来の昔話と伝説
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潮来の昔話と伝説
何となく可愛いくなってな、次の宿直当番の晩からは、狸や狐の好みそうな鮒の煮付や油揚・がんもどき・握り飯などを用意して、夜になるのを待ちかねて、せっせと大生から水原の役場までの道を急いだもんじゃった。役場に着くと一生懸ω命に戸締まりをし、寝支度をして御馳走を入口の所へ置くと、部屋の隅でじいっと外の気配に聞耳をたて「シュウニュウシャン」の現われるのを待つ。ある晩など正体を見届けようと雨戸の節穴からしばらく見張っておったんじゃがその晩は遂に現れずしまいなんじゃな。だが我はあれは確かに狐の仕業に違いないと決めておったんじゃが思いがけずに正体を見届けることができたんじゃ。あれは月の明るいよくなぎた晩じゃったDかわやこうしど厨に立って格子戸からふと外を見ると、太い尻尾のフサフサとした銀色に光る毛並みの見事な狐の後姿が見えたのじゃ。その姿を見てからというものは、宿直の晩が待ち遠しくってな、狐にやる御馳走も念を入れて、狐の好みそうな物を持つては、せっせと役場への坂を登って行ったんじゃ。もちろんそのことは我と狐との秘密として誰にも話さずにいた。そうして一年余り経ったある晩のこと、来ないんじゃな。次の晩は当番の人に替ってもらって、首を長くして待っておったのじゃが、来ないんじゃ。これは何か変ったことがあったんじゃと判断した我は役場が退けてから水原から釜谷、大生、大賀の方まで捜したが見つからん。「ォlイ我じゃよ、出て来いよ1」と呼んでも反応無しじゃ。次の日曜日は朝から弁当を持って身支度を整えて大生の宮の辺りから釜谷の台、もちろん役場のまわり、と捜したが見つからない口その日も暮れかかってしまい、半分諦めかけて帰ろうとした時、おったのじゃD まぎれもないあの狐が、南谷津の森の中で畏にかかって、右の前足に民の金具が食い込んで血が泌み腫れあがって、我のn3凋包