ブックタイトル潮来の昔話と伝説

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概要

潮来の昔話と伝説

早速茶釜をかまどにかけると薪をくべた口十一月も末のころなので風もつめたく寒さを感じた黄門様は、かまどに近づき手をかざし暖を取りながら湯の沸くのを待っていると、湯が涼って茶釜から湯気がたちのぼってきた、じっと見ていた黄門様は「これは不思議じゃ、湯気が鶴亀の型に見えた口これは、めでたい鶴亀の茶釜だ」と、茶を飲むのも忘れ、しばらく見つめておられたが筆をとり、紙に鶴亀の茶釜と命名し主に渡されたD甚左衛門さんは恐縮し、「家宝に致します」と床の間にかざり大切にしていた。それを伝え聞いた人達が毎日おすなおすなと茶釜を見に訪れ、店は大賑わいを見せるようになった。二代目の甚左衛門さんになった折、「ぜひ、茶釜をゆずってくれ」という人が現れた口甚左衛門さんは、かねがね茶釜の持手に傷があったのでこれを直せば、なほよかろうと、いかけやに直してもらい早速、茶釜を火にかけ、前より鶴亀がはっきり見えるよう期待し待つことしばし、かしながら鶴亀どころかへんてつもなく湯気のたちのぼるばかりであったD怒った甚左衛門さんは、その茶釜をたたき割ってしまったという。黄門様命名の茶釜も、今は古老達の茶のみ話に出て来るだけになっている。ただし茶釜のこわれた一片は今でも甚左衛門さんの家に家宝として残された。(延方)- 83 一し