ブックタイトル潮来の昔話と伝説

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概要

潮来の昔話と伝説

「また長者さまにおねげえするさ」と、長者の親切をいいことに、まるっきり頼りにしてしまう口これはまだいい方だ。中には借りた膳椀のいくつかをくすねる愚かものも出てきた。りでなく、借りたものをそっくり借り貰い申してしまう不心得者も出てきたのである。それからは、道祖神さまの前には、膳椀をのせた棚はおろか、いくらお願いしても、椀はあらわれなくなってしまったということだD「来てもらう人は、これでギリギリだよ」「しかたねえ、やっぱりお願えすることにすっか」このようにして人々はいつも長者さまに、「長者さま、あさって観音講がありますんで、十五人分のお膳とお椀、そればかお膳やおよろしくおねげえ申しますと紙きれに書いて、山すその道祖神様のところへ置いてくる。人々は、それを大事に使い、寄り合いが終ればきれいに洗って、その日の朝になると、人数分のお膳やお椀は、ちゃんと棚の上に並べられであったという。ていねいにふき清めたお膳やお椀を、きちんと棚の上に納めてきた。「ありがとうございやした。お蔭様で無事に終りやした」だ。(潮来) こうして山の上の長者は、誰がいうともなく「膳棚長者」と呼ばれるようになったということ-85 -